サブスクD2CのCS(カスタマーサポート/カスタマーサクセス)ことはじめ
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サブスクD2CのCS(カスタマーサポート/カスタマーサクセス)ことはじめ

これは何

  • Repro Inc. / ㈱銭湯ぐらしの伊藤(@n_11o)が自社でリピート通販事業(今風にいうとサブスク型D2C)を始めて1年ほど経ったので、この1年弱で行ったカスタマーサポート・カスタマーサクセスの方法や心掛けていることを備忘録的に書いたドキュメントです

目次

どんなことが書いてあるか?

  • B2B SaaSで重要と言われているカスタマーサクセスはサブスクリプションモデルなのであればB2C商材においても最重要と考えているのでその背景や実践したことを書いています
  • 「うちのお店でも単品リピート通販これから始めたいんですが…😶」という個店の方や「お客さんがリピートしてくれなくて困ってます😢」という人は参考になるかもなのでぜひ読んでみてください。
  • 結構長いので、お忙しい方は目次から自分の読みたいところに飛んでそこだけ読むのがお勧めです📖 あと閲覧はPC推奨です

前提(Disclaimer)

  • 社内ドキュメントを加工・流用しているので、"ですます調"と"である調"が混じっていたりするのはご容赦ください
  • キャリアのなかでCSの経験があるわけではないのでめっちゃ手探りですが、現在サービスリリースから13ヶ月目(2020.7月リリース)で12か月後のリテンションレートは51.4%なので、C向けのサービスとしては悪くない数字かなと思います
    • Dollar Shave Clubと同水準!
    • Dollar Shave Clubの4年間のリテンション数字は一般のC向け定期購入プロダクトをはるかに超えている。Dollar Shave Clubに登録してから12ヶ月後では約50%のユーザーが課金し続けている。48ヶ月では25%の登録者が課金しているのだ。 比較すると、2017年6月にアメリカで上場した食品通販のBlueApronの12ヶ月後のリテンション率は22%、2017年11月に同じくアメリカで上場したHelloFreshでは12ヶ月後のリテンション率はたったの12%であった。 (「【完全版】D2Cビジネス 成功へ導く5つの秘訣と事例集 Part2」より抜粋)

なぜCSが重要か

カスタマーサポート・サクセスの重要性についてはもはや自分がわざわざ述べる必要も無いかとは思いますが、目的はズバリ顧客満足度を高め、継続率を伸ばし、解約率を下げるためです

業界だと「赤本」「青本」あたりがテッパンだと思うのでこの辺をお読みください

C向けだと西井さんの本ややずやさんの本もおすすめです(CSというよりサブスクリプション全般ですが)

D2C文脈でのCSの重要性

  • D2Cに限ったことでもないが、FB/Instagram/Googleなど大手プラットフォームのCPAはどんどん上がってきており、新規ユーザー獲得に以前よりもコストがかかる時代になっている
  • そういった課題に対して、下記Podcastのテーマのようにデジタル広告に頼らないユーザー獲得チャネル(メディアやコミュニティなど)の模索がD2Cブランドのホットトピックの一つとなっている
シリアルトーク大好きです
  • 他方で、1:5の法則などが昔から言われているように、既存顧客の維持もリピート通販に限らず重要
  • 特に、サブスクリプションモデルをとっている殆どのD2Cは単月でのリクープを想定しておらず、ロイヤルユーザー(≒解約しないユーザー)を見つけなければユニットエコノミクスが合わないビジネスのため、顧客に続けてもらうことが重要
  • そういう意味で、SaaS業界の「カスタマーサクセス」という言葉をD2C文脈に持ち込んでいるのが本稿だが、考え方における目新しさはほぼ無いと言ってよい。元々重要性がわかっている方はここで回れ右したほうがよいかもしれません
  • 実際「D2C カスタマーサクセス」で検索したらD2C業界でもカスタマーサクセスという言葉が一昨年あたりから使われ始めているので、SaaSから2~3年遅れではあるがすでに浸透してきている
成功しているD2C企業にはすでにカスタマーサクセスのチームがあるらしい(
成功しているD2C企業にはすでにカスタマーサクセスのチームがあるらしい(「カスタマーサクセスがB2C広がりつつある D2Cブランドでのチーム作り・マーケティング施策とは?」より)

サブスク商材でもCSを重視しなくて良いケース

  • プロダクトが強いケース
    • プロダクトの機能、顧客に提供するソリューションが圧倒的で唯一無二の場合、何もしなくてもリピートしてくれると思うのでCSの優先度下げても良いとは思います
  • ブランドが強いケース
    • ブランド力やプロデュースしているインフルエンサー個人の力でお客さん側がリピートしてくれるようなものであればCSの優先度下げても良いとは思います
    • サイトや特典は微妙だけど好きだからお布施がもらえるファンクラブみたいな感じ?
  • また、
  • 💡
    ・初月分の売上だけでリクープできる ・ビジネスモデル上はサブスクだが実質買い切りモデル(3回購入したら終わり、とか継続回数が決まっている)

    みたいなケースでも戦略上CSを重要視しないというのはぜんぜんアリだと思う。まあ会社として何を目指すかですね😐

  • 僕らの場合、商材の性質としても継続してもらうことは重要だし、「銭湯のように10年、20年と長く続けて常連さんと関係を築いていきたい」という理念めいた気持ちもあるのでCSを重視している
  • 毎回例に出して恐縮ですが、Fond福山さんの仰っていた自社が伸ばすべき3つの強みのうち、「うちはCustomer intimacyを伸ばしていくぞ」という方針にならない限りはCSはそんなにやらなくてもいいのかもしれません
💡
<成功している会社はこのなかの少なくとも1つが秀でている> 1. プロダクト・リーダーシップ (例. Apple 2. オペレーショナル・エクセレンス (例. コンビニエンスストア 3. カスタマー・インティマシー (例. ザッポス (「成長率の罠にハマるな。SaaS経営者が考えるべき戦略と戦術 [Fond・福山太郎さん]」より抜粋)

Podcastのこの回、かれこれ20回は聴いたんじゃないか。D2CやSaaSに限らずプロダクトづくりをしている全人類必聴です

初期CS活動の大原則

  • 個々の施策の話に入る前に、CS(攻めのカスタマーサクセス・守りのカスタマーサポート両方)を立ち上げていくうえで意識すべきと考えることを記載する
💡
<初期CS活動の大原則> ・オンボーディングがすべて ・テックタッチとヒューマンタッチをつかいわける ・CRMはlineやメルマガだけにあらず ・RDBの設計と管理が肝

Onboarding is Everything

補足: Superhumanに学ぶオンボーディング

  • toCサービスのオンボーディング事例として参考にしているものの一つにSuper Human("The Ferrari of Email Services")と呼ばれるメールサービス)がある
  • Superhumanは登録したすべてのユーザーに対してヒューマンタッチのオンボーディングを行っている
  • B2B SaaSのサービスならまだしも、B2C SaaSのサービスで、Subscribeした全てのユーザーに対してオンボーディング担当者が30分もの時間をかけて(僕の場合は質問を結構したので45分位だった)対応しているサービスを僕は見たことがありません (「Superhumanを使ってみて感じたThe Modelの新しい形」より抜粋)
  • 自社でもSuperhumanを見習い、定期便の新規契約が発生したらアンケートの回答とキックオフmtgを全顧客に対してご案内するオンボーディングプロセスに変更した(オンボーディングの参加を完全に強制するのは難しく、実質のアンケート回答率は80%、キックオフmtgまで参加してくれるのは20%程度)
  • ユーザーインタビューことはじめでも触れたが、PMFフェーズでは顧客の数もそこまで多くないはずなので、オンボーディングプロセスのなかにヒューマンタッチな部分を入れるのは顧客の期待値合わせという点でもインサイト抽出という点でもアリかなと考える

テックタッチとヒューマンタッチの使い分け

  • 前提として、顧客へのCS活動はB2Cであってもテックタッチのみで完結させず、意識的にヒューマンタッチな部分を残して人気(ひとけ)を出すほうが良いと考えている
  • 詳細はこのあとのパートで詳述しているが、弊社では問い合わせ対応など顧客のマイナスをゼロにする系の活動はテックタッチに寄せ、イベントや手書きメッセージなどより商品とその世界観を好きになってもらえるような活動にリソースを割いている
「テックタッチ」「ヒューマンタッチ」を分け、「テックタッチ」を最大限活用し、「ヒューマンタッチ」にレバレッジをかける (「デジタルネイティブな会社の文化とは」より抜粋)

CRMはlineやメルマガだけにあらず

  • 前提として、プロダクトや体験が良くないのにCRMに投資しても無駄
  • また、メルマガやlineなどオンラインチャネル上のコミュニケーションだけで顧客のエンゲージメントを高めるのは極めて難しい。lineのやり取りだけでお付き合いから結婚までいくようなもの
  • サブスクD2Cの場合、毎月にしろ隔月にしろ定期的に必ず顧客に商品を発送しているので、むしろ梱包や同封物のようなオフラインでCRMを行うほうにリソースを投下したほうが顧客は喜ぶ。開封率100%の施策、それが梱包

RDB設計 is 肝

  • 上記オフラインでのCRMや顧客の分析を行うために肝になるのがRDB設計
  • 多くのサブスクが会員情報(契約商品,継続月数,発送先住所など)と問い合わせ履歴・メルマガ配信履歴・解約理由などは紐づけているが、「アンケート」「ユーザーヒアリングの内容」など顧客のジョブを理解するために取得した情報は紐づけていなかったりする。個人的にはジョブと会員情報の紐づけこそがもっとも重要と考える
  • それらを紐づけることによって、「Aというジョブを抱えている(≒Aという期待値で自社商品を買ってくれた)お客さんは継続率が高い」とか「Bの期待値で買ってくれているユーザーの解約理由は自社で解決するのが難しいものが多く、継続月数も短いため注力ターゲットから外す」みたいな議論ができる
  • デモグラデータや行動データだけしか取得できていないと「Amazon payで決済しているお客さんは継続率が高い」とか「20代の近畿エリアのユーザーはこういう解約理由が多い」みたいな分析に走ったりするが、そういうのは筋の悪い仮説しか生まないというのが個人的な体験
  • BASEの定期便機能を利用している事業者に向けたRDB設計のステップについては「サブスクD2Cの顧客DB設計ことはじめ」に詳述予定(まだ書いてません🤥)

カスタマーサポート・カスタマーサクセス施策の例

施策の全体像

  • 横軸は「定期便契約後のXヶ月サイクル」縦軸の項目は実際に行っている施策を項目別に記載
  • 縦軸の上のほうにある項目ほど人の手と工数をかけてやっており(ハイタッチ)、下にある項目ほど自動orお客様自身で処理できるようになっている(テックタッチ)
    • ※ハイタッチとテックタッチという用語の使い方が若干怪しいのでCS界隈の方々ぜひご指摘ください
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守り系

  • カスタマーサポートに分類されるであろう活動。
  • 基本的にはテックタッチを志向

問合せの自動化

  • 問合せに関してはGAS+Airtableを使い、顧客からご連絡がきた時点で自動でよくある質問(解約手続きや発送サイクルについてなど)をご案内するフローにしている
かなり強引なワークフローなのであまり美しくはない…🙁
かなり強引なワークフローなのであまり美しくはない…🙁
  • BASEの弱点として、
    • 問合せ内容をCSVなどで吐き出せない(≒問合せログの蓄積、問合せ種別の振り分け、対応するCSのアサインなどがしにくい)
    • 問合せに手動で返信する必要がある(自動応答などを組めない)
    • zendeskなど3rd partyのカスタマーサポートツールを入れるのが難しい
    • といった課題がある

  • 上記課題を解決するために重宝しているのがAirtable。Airtable上に顧客の契約情報など他のテーブルを入れておけば問合せとリレーションが張れるうえ、Zapierのようなワークフロー自動化の機能もある(しかも無料で使える範囲がZapierより多い!)
問合せのステータスや回答するメンバーのアサインがされたらslack連携で通知を飛ばすなども簡単に可能
問合せのステータスや回答するメンバーのアサインがされたらslack連携で通知を飛ばすなども簡単に可能
  • おまけにtable以外のviewも充実している(この点はnotionと同じ)ため、問合せのステータス管理なども容易。zapier/trello/google sheetなどをそれぞれ利用しなければいけなかったユースケースを1ツールで提供してくれている
Airtable support「
Airtable support「Guide to kanban view」より。問合せのステータス管理はkanban viewで行っている
  • 実際にBASEを使っていて問合せの半自動化ワークフロー組みたい方はお問合せ下さい。スクリプトなどお伝えします

FAQ整備

  • 問合せの8割方の内容は過去にもきたことがあるものや自己解決できるものなので、お客様自身で解決できたりCSがリンクさえ送れば対応完了できるようにFAQを整備した
  • notionで随時更新しているが、独自ドメインなど取らずに公開urlで共有しているのであまり見栄えが良いとはいえない🤥 まあ課題解決が優先ということで
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攻め系

  • カスタマーサクセスに分類されるであろう活動。
  • ヒューマンタッチを志向

購入直後キックオフ

  • 前述の「オンボーディング is 命」を信条に、新規契約者に最初から熱量高くなってもらうた対面のキックオフを実施している
  • 新規購入者が定期便の利用手続きを終えると顔合わせを兼ねたヒアリングmtgの依頼が飛ぶ。ツールはmixmaxを利用
  • 参加してくれる顧客は全体の2割ほど
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コミュニティイベント

  • 会員さん向けに定期的にイベントを実施。お風呂のもとの原料となっている生産者さんの紹介など
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顧客へのインタビュー

  • 特にロイヤリティの高い顧客や理想的な使い方をしてくださっている顧客にインタビューさせていただき、noteで発信
  • B2Bでいうところの事例コンテンツ的な立ち位置

生産者だより

  • 毎月、商品の原料となっている生産者のストーリーを伝える小冊子を商品に同封。オンライン生産者訪問と同様、作り手である生産者さんのことを知ってもらいエンゲージメントを高めるのが目的
生産者さんのストーリーを伝える冊子
生産者さんのストーリーを伝える冊子
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梱包メッセージ

  • 梱包はスタッフが一つひとつメッセージとイラストを描いてくれている

お手紙とビデオレター

  • 毎月、商品を製作しているスタッフの手紙とビデオレターを商品に同封。生産者さんだけではなくスタッフの人となりも知ってもらいエンゲージメントを高めるのが目的
  • 作り手を出すといった取り組みは土屋鞄さんなどを意識しています
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  • 定性インタビューで聞くとすごく喜んでくれている方が多い反面、実際何割の方が見てくださっているのか計測できないのがネック(これはアナログな同封物の施策全般的に言える)

…とこんなかんじで試行錯誤しつつも色々とやっております

課題感・これからやりたいこと

  • 最後に、主にB2B SaaSとの比較でサブスクD2CのCS活動の難しさや現状の自社サービスの課題感を記載します

解約の予兆把握の困難さ

  • SaaSなら利用ログを基にチャーンしそうな顧客を検知するのは鉄板だが、D2Cで「商品が実際に消費されているのか」を把握することはできない
    • myページなどを設けているD2Cはそこへのログイン履歴などで見ているのか?あまりそこと解約の相関はなさそうに思うが…
  • SaaSの年契のように契約更新のタイミングなどもないため、先回りして解約阻止するのがSaaSと比べて難しいと感じる

カスタマーヘルススコア策定

  • 上述の通り利用ログは取れないが、イベント参加履歴、メルマガの開封履歴やNPSなどからカスタマーヘルススコアを作りたいが現状できていない

オンボーディングのテックタッチ化

  • 「購入直後キックオフ」について。今はユーザーヒアリングも兼ねているのでよいが、現状のやり方だとのちのちスケールしない
  • ステップメールや録画した動画での解説など、セルフオンボーディングでも熱量を伝えられるような設計にするか、ここはパワーをかけてオンボーディング担当者を増やすかの2択。後者の人的リソースを割いてまでする必要があるのかの判断はまだできていない

積極的なアップセル・クロスセルのご提案

  • 旧来の単品通販のような、コールセンターをアウトソーシングor内製化してガンガン電話かけるのは絶対にやらない
  • しかしながら、顧客の嗜好を他のD2Cよりも意識的に取得しているからこそ、顧客も喜ぶような形で自分たちの取り組みや商品を紹介する施策は今後必要になってくる
  • ReproでもCSと既存顧客へのSalesは部隊が分かれているため、組織が大きくなってきたら分けるべきか

購入前のCS活動

  • チャネルトークのような、いわゆるチャット型のweb接客ツールの利用で購入前の情報提供やコミュニケーションをする活動。
  • これもCSが担当するスコープなのかはさておき今後必要

トンマナ策定

  • FAQはできているが、問合せのメール文の文体などのルールがないためCSがスケールした際に課題になる
  • 優先度低いが、今からでも取り組める課題であるため早めに着手したい

まとめ

  • 単品通販の売上アップ施策というとどうしてもLPOやトライアル転換などがフォーカスされがちですが、SaaS業界のようにカスタマーサクセスファーストな意識がD2Cの間でも広まることを願います!
  • B2CのCSってぜんぜん情報もないし知り合いもいないので、情報交換してもよいよという方のご連絡ぜひお待ちしております

参考

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追記:CS HACK #61 登壇資料

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